Album Review

Devendra Banhart 『Smokey Rolls Down Thunder Canyon』

My Rate : ★★ 「インディーアーティストのポップ化」といったときに、しばしば生じる大きな誤解のひとつは、プロダクションが洗練/メジャーよりにさえなればいいのか、ということ。もちろん、そうではない。プロダクションが洗練されたとしても、「ポップ強…

Foo Fighters 『Echoes, Silence, Patience And Grace』

My Rate : ★★ デイヴ・グロールが「いい奴キャラ」なのはよく知られたこと。だが、最近そのいいやつぶりは、「今のアメリカのメインストリーム・マーケット」ばかりに向けられて、かつてNirvanaが好きだった人にはまったく向けられていないように思う。浅は…

1900s 『Cold & Kind』

My Rate : ★★★★ イギリスはグラスゴー出身の1990sといくらなんでも紛らわしすぎるバンド名だが、まったくの別バンド。こちらはシカゴ出身。基本的にはオーケストラル・ポップだが、アメリカーナの要素や、USインディーバンドがあまり使わない60sの要素もあり…

Reverend And The Makers 『State Of Things』

My Rate : ★★ 「アークティックがらみ」ということで話題にはなり、売れもしたけれど、「アークティックがらみ」からこれっぽっちも抜け出ていないのはどうなんだ?The State of Thingsアーティスト: Reverend & The Makers出版社/メーカー: Wall of Sound発…

PJ Harvey 『White Chalk』

Myspace : ★★嗚呼、これをやるなら、2年前か、どんなに遅くても去年にしてほしかった。 PJ Harveyという人は、なんだかんだで結構ミーハーなところがあって、セカンド・アルバム以降、どの作品にも、その時々の流行が割りと素直に反映されるところがある。彼…

Super Furry Animals 『Hey! Venus』

Myspace : ★★★★これまで、別に信頼を裏切る作品なんてないけれど、ここまで外向的で、「ああ、これいい!」とはっきり断言できるSFAのアルバムっていうのも久しぶりじゃない?グラフ・リーズのソロがコナー・オバーストのレーベルからでたり、今作もBroken S…

Shout Out Loud 『Our Ill Wills』

My Rate : ★★The Cuteの「Inbetween Days」を、カウベルといかにも北欧っぽいストリングスで味付けしたような「Tonight I Have To Leave It」は非常にいい出来で、この北欧バンドも同郷のピーター・ビヨーン・アンド・ジョンのビヨーンのプロデュースでポッ…

Hot Hot Heat 『Happiness LTD.』

Myspace : ★★「Give Up」は結構よかったのになぁ。 なぜか、ブッチ・ウォーカー(アブリル)とロブ・カヴァロ(マイケミ)をプロデューサーに迎えた3枚目。プロデューサー陣を指して、セルアウトというには早計で、サウンドはアブリルでもマイケミでもなく(…

Animal Collective 『Strawberry Jam』

My Rate : ★★★★ この言い回しが大袈裟であることは承知の上だ。しかしどうしても、このアルバムを聴いたとき、Beatlesの『Sgt.Peppers〜』を連想せずにはいられなかった。もちろん、『Sgt.Peppers〜』はロックの歴史において「最高のアルバムの一つ」と言わ…

Go! Team 『Proof Of Youth』

My Rate : ★★★★1/2 初期Beckと比較しての、彼らの貴重さに関しては、すでに言及した通り。アルバム自体もその期待をまったく裏切っていない。更にもうひとつ、このアルバムから連想されるのは、スライ・アンド・ザ・ファミリーストーン。ちょうど、『Stand!…

Hard-Fi 『Once Upon A Time In West』

My Rate : ★ 「Hard-Fiというバンドは、爆笑できて、かつちょっとホロッとできることが全て」とは以前、言及した通り。実際、アルバムはどうなったか。残念だが、ホロッとできないばかりか、笑うことさえもできない代物だ。先行シングルは確かに笑えた。しか…

Paramore 『Riot!』

My Rate : ★★★1/2 思ったより商品価値の高いアルバムだったので、正直驚いてしまった。何のことはない、彼女たちは、「エモ・パンク時代のアヴリル・ラヴィーン」なのだが、外見が雄弁に語るそのキャッチコピーをちゃんと音にできている点は評価できる。特に…

KT Tunstall 『Drastic Fantastic』

My Rate : ★★ 先行シングルの、まさかのラテン&コスプレ路線の笑激もさめやらぬKT”プラダを着た般若”タンストール。蓋を開けてみれば、南米進出路線かと思えばそうではなく、よくいるシェリル・クロウ(=一般名詞)にありがちな、「売れたら急に硬派アピー…

Kanye West 『Graduation』

My Rate : ★★ 件の「ガソバレ」の笑激も覚めやらぬ、カニエさんの卒業論文『Graduation』。まあ、当初懸念したよりはまとまりのあるアルバムにはなっている。中にはいい曲もある。が、わずか、1ヶ月前に出たばっかりの自身がプロデュースを手がけたCommonの…

Rilo Kiley 『Under The Blacklight』

My Rate : ★★★★1/2 「私は、あなたの銀の裏面だった。でも、今、私は金の表面なの。」 男から離れていく女の心情を硬貨の表裏に例えた「Silver Lining」でこのアルバムは始まる。LAのインディー・ロックバンド、ライロ・カイリーのヴォーカルであり、シンガ…

Candie Payne 『I Wish I Could Have Loved You More』

My Rate : ★★★ 何で邦題つけなかったんだろ?直訳でばっちりじゃないですか。 「もっとあなたを愛せていたら」(遠い眼…) 過去の出来事に対する後悔をにじませる過去完了形がいい味出しております。 もう一回繰り返しましょう。 「もっとあなたを愛せていた…

Dead 60’s 『Time To Take Sides』

My Rate : ★★ 何なんでしょう、現地UKでのNo Buzzっぷりは。海外からほとんど情報が入ってこなかったので、「これゼッテーリリースされないっしょ」とタカをくくっていたら、本当に出ちゃったDead 60’sのセカンド・アルバム。NMEと喧嘩でもしたんでしょうか…

Lethal Bizzle 『Back To Bizznizz』

My Rate:★★★ 一般で言われている「グライム+ニューレイヴ」っていうのが、ほぼそのままのサウンド。っていうか、より直接的には「ディジー・ラスカル+Hadouken!」(これも一般的に言われているけど)まあ、HipHopの側からHadouken!みたいな事をやる奴は…

M.I.A. 『Kala』

My Rate : ★★★1/2(★★★★1/2と★★の間をさまよいながら) M.I.A.の言動を見ていると、「この人って一時代前の人の感覚だよな」と思う瞬間がある。例えば、彼女がこのアルバムについて語った言葉を引用してみよう。 「今はポスト・グローバリゼーションって言葉が…

Yeah Yeah Yeahs 『Is Is EP』

My Rate : ★★★1/2 これは進化か、退化か。 デビュー・アルバム『Fever To Tell』とセカンド・アルバム『Show Your Bones』の間でサウンドを激変させたYeah Yeah Yeahs。このEPは『Fever To Tell』の後にリリースされたLive DVDに収録の楽曲を中心に5曲を、リ…

Lucky Soul 『The Great Unwanted』(恋はゴージャスに)

My Rate : ★★★1/2 完成度の高い「レプリカ・サウンド」だ。 そう、Lucky Soulとは何か、といったとき、要するにそれは「レプリカ」なのだ。50s〜60sの煌びやかなポップスの精巧なレプリカなのである。 例えば、同じ60sサウンドといえば、Pipettesだが、Pipet…

Kate Nash 『Made Of Bricks』

My Rate : ★★★★ ちょっと意地悪く言ってしまえば、彼女がここまで受けているのは、「Lily Allenがヤンキーに見えてしまう優等生orナード子」を巻き込むインドア感とポップさなのだろう。Lily Allenの「Smile」と比較された大ヒット曲「Foundations」が、実は…

The Coral 『Roots And Echoes』

My Rate : ★★★1/2 もはや、Coralに「恐るべき子供達」「時代の寵児」として期待する声などどこにもないだろう。デビューから5年。多くのリスナーがすでにそのことに気づき、そして、彼ら自身もやっとそのことを開き直れたのではないか。というわけで、4作…

The Twang 『Love It When I Feel Like This』

My Rate : ★★ ストーン・ローゼズなり、ハッピー・マンデイズなり、オアシスなり、ザ・ストリーズなりは、もはやUK全土でひとつの「定番」として定着したアーティストだ。だから、たとえば、郊外のヤンキーが、「ローゼズかっけー!あんなんで合唱してぇ!」…

The Thrills 『Teenager』

My Rate :★★ まだやってたのか… と、正直思ってしまったが、よく考えてみると前作から約3年ぶりの新作。3年は、アルバム間のスパンとしては十分ありえる話なんだけど、体感でそうはとても思えないくらい、今のシーンってめまぐるしいですね。 というわけで、…

Tegan And Sarah 『The Con』

My Rate : ★★★1/2 シングル「Back In Your Head」を聴いて、「なーんか、Death Cab For Cutieの最新作っぽいなー」と思ったら、プロデュースはクリス・ウォラ。(ちなみに、ベースでマット・シャープも参加。AFIのベースもなぜか参加)というわけで、カナダ…

Common 『Finding Forever』

My Rate : ★★★★1/2 全く、ヒデェジャケだぜ! 前のアルバムは、まるでダニー・ハザウェイみたいに麗しかったのにYO! これじゃ、まるでイケテナイ、フュージョン・バンドじゃねーかYO! 天気予報でもしたかったってのかYO! だが、傑作『Be』に続く、『Finding …

Prince 『Planet Earth』

My Rate : ★ 聞けばプリンスはこのアルバムをUKではリリースしないらしい。「古い商慣行に囚われて新しい努力をしていない」とレコード会社を批判して、新聞の朝刊のオマケとしてタダでばら撒いたというのだ。一見、勇気ある過激な行動として武勇伝にでもな…

Hold Steady 『Boys And Girls In America』

My Rate : ★★★1/2 リリースは昨年。アメリカのインディー・メディアは軒並み大絶賛だったHold Steadyの3作目。一体どれだけの人が待っていたのかは謎ながら、ようやく、しかも隠れるように出ていた国内盤。無駄なものが一切ない純粋アメリカン・ロック。「何…

Polyphonic Spree 『Fragile Army』

My Rate : ★★★1/2 聴前:「白のローブ」→「虹色のローブ」と来て今回はなぜか、ローブを脱ぎ、黒の軍服をまとってしまったポリフォニック・スプレー。「人畜無害ないい人が急にマジメ腐って熱血漢になったときほどイタイものはない」というマーフィーの法則…