Animal Collective 「Fireworks」

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元はジャンク系の音だったはずなのに、知らない間に全然似ていないはずのシンガーソングライター達と一緒に「フリーフォーク」に括られて、いや、括られた程度では済まされず、あろうことかその代表くらいの勢いで注目されてしまったアニコレことAnimal Collective。今年に入っても「あろうことか」続きで、なんと古巣Fatcatを離れ、Arcric MonkeysとFranz Ferdinandを抱えるDomino Recordsと契約。「動物もついに身売りか」と一部ファン(関係者)の間で物議を醸しつつ、9月Domino移籍第一弾となるアルバム『Strawberry Jam』をリリース予定。その第一弾PVがこれ。


眩い…


なんか、ピカピカしてます。電子音鳴ってます。森の中に引き篭もっていた動物達が里に、というかネオン街に下りてきた感じ。いやー、インディーの森の開発が進むと動物も里に下りてくるんですねー。っていう、話じゃないですが。これまでとは比べ物にならないくらい開放的な音を鳴らしていることは確か。


Animal Collectiveっていうのは、これまでジャンクなリズムを活かして、狂騒的な音楽をやってきたわけだけど、その狂騒っていうのはあくまでも、「実験の音楽の森の中」で秘されたもの、つまり「凄くにぎやかな音楽であるにも関わらず、実のところ凄く閉鎖的」であったと思うんです。しかし、彼らが偶然にも一緒に括られた「フリーフォーク」のシンガーソングライター達、あるいはそれとは別のアメリカのインディーに長いこといた苦労人達はここ数年急に光が当てられ、そして彼らなりにポップになった。Modest MouseDeath Cab For CutieBroken Social SceneもSufjan StevensもDevendra Banhartも(まあ、Joanna Newsomみたいな例外もあるけど)。そんな時代の中、彼らはもはや、この流れに乗るか、反るか、どっちかしか選択肢はなかったように思う。思い切って森を出るのか、それとももっと森の奥深くにもぐっていくのか。彼らが選んだのは前者。


彼らの音楽性を考えたとき、これは他のバンドに比べても非常にリスキーな賭けだったと思う。何しろ、「ロック」という音楽を考えたとき、「リズム」というのはかなり重要な要素、逆に言えば一番制約が大きいはずの要素で、一方、Animal Collectiveのもっとも「普通じゃない」部分がこの「リズム」の部分だったりのだから。でも、結局のところ、「ある一部の部分を極端に特異にしていく」というやり方の実験音楽には、もうとっくの昔に限界が来ていたということを彼らは知っていたのかもしれない。むしろ、自分たちの実験をどう「ポップ・フィールド」にフィードバックするか。多くのバンドがそうしたように、彼らもその問いに挑んだわけなんでしょう。


その結果がこの曲。まさか彼らにこういう音が鳴らせるなんて想像もしていなかった代物です。リズムは相変わらず変則的だけど、それを補っているのが実は、酔っ払った小動物みたいな声で歌うメロディー。意外にちゃんとフックがある。大きく音は変わったけど、アニコレにしか鳴らせない至福のストレンジ・ポップに仕上がった1曲となりました。


実験音楽の限界とその超え方」。この問いに対する彼らの回答の全貌が楽しみ。