Video Nasties 「Karl Blau」

My Rate : ★★★★
初期ダムドに近いようなブロークンなパンク。がむしゃらに走るバンドのアンサンブルに必死についてくるのピアノの高音連打がそこにちょっと知的な趣をあたえ、ヴォーカルの不機嫌でしゃがれた声は、イギリスに大量出現して久しいリバフォロアーやテムズ・ビーターの能天気さとは一線を画している。Cajun Dance PartyやLate Of The Pierにしてもそうだけど、「最近のイギリスの流行から離れてはいないけど、違う角度からエディットしなおせている」ところがWayOutWest Records周辺のバンドの面白いところだ。特に、音からして、Cajun Dance Partyとは裏表の関係に、このバンドはなっていくのではないかな。


バンド名に"Video"って入ってるのに、PVがないという罠。
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Late Of The Pier 「Bathroom Gurgle」

My Rate : ★★★★1/2
イントロで電子音が入ってきて、「あー、出がらしニューレイヴァーかぁ」とがっかりきそうだが、それもつかの間。実はリズムはエレクトロというよりはブギーで、ヴォーカルは、ねっとりとグラマラスで、妖しい。曲の作り方も「単調な打ち込みリズムにキーボード」なモラルハザード・エレポップではなくて、曲の前半は不機嫌なVerseとちょっと甘いChorusのコーラスの使い分けが巧み。ここまでで十分いい曲なんだが、後半から、ドカーンとノイズを鳴らしたあと、走る走る。ここまで多彩な変化に富んだ曲、エロル・アルカンへのロックへの返答と一部で言われたクラクソンズさえやってないぞ。エレクトロ飽和期において唯一(しかも、ダントツに)面白い音を鳴らしたバンド。

Devendra Banhart 『Smokey Rolls Down Thunder Canyon』

My Rate : ★★
「インディーアーティストのポップ化」といったときに、しばしば生じる大きな誤解のひとつは、プロダクションが洗練/メジャーよりにさえなればいいのか、ということ。もちろん、そうではない。プロダクションが洗練されたとしても、「ポップ強度」が変わらないのでは意味がない=それまでより多くの人に聞かれるはずがない。今年のルーファス・ウェインライトも単にこれまでの作品を水で薄めただけの代物だったが、この作品もそう。要するにデベンドラの今作は、前作のプロダクションを聞きやすく洗練させたら、「変態キャラmeets変態フォーク」というケミストリー(?)が崩れ、ただつまらなくなったということ。Sufjan StevensやAnimal Collectiveとはそこが違う。

Smokey Rolls Down Thunder Canyon

Smokey Rolls Down Thunder Canyon

Foo Fighters 『Echoes, Silence, Patience And Grace』

My Rate : ★★
デイヴ・グロールが「いい奴キャラ」なのはよく知られたこと。だが、最近そのいいやつぶりは、「今のアメリカのメインストリーム・マーケット」ばかりに向けられて、かつてNirvanaが好きだった人にはまったく向けられていないように思う。浅はかな全方位対応だった2枚組の前作なんてその極みだが、それを一枚にしたような今作においても、もちろんそれは変わらない。

Echoes Silence Patience &

Echoes Silence Patience &

1900s 『Cold & Kind』

My Rate : ★★★★
イギリスはグラスゴー出身の1990sといくらなんでも紛らわしすぎるバンド名だが、まったくの別バンド。こちらはシカゴ出身。基本的にはオーケストラル・ポップだが、アメリカーナの要素や、USインディーバンドがあまり使わない60sの要素もあり、面白い。(ちょっとSufjan Stevensに通じる部分もなくはない)案外いそうでいないバンド。USインディーが成り立ち上、「脱構築」的な発想をせざるをえないのはわかるが、そろそろそれを卒業したバンドも出てきてほしいものだった。このバンドの「過去の音楽に素直な感じ」はかなり貴重。


オフィシャルサイトでアルバム全曲視聴可