The Go! Team 「Grip Like A Vice」

My Rate : ★★★★1/2
たとえば、ロックを意識したヒップホップっていうのは、結構ある。古くはRun D.M.C.、近年だとN.E.R.D.アウトキャストティンバランドもそうだ。逆に、ヒップホップを意識したロックていうのも多い。ビースティー・ボーイズやいい時期のレッド・ホット・チリ・ペッパーズはその代表例。で、ここでふと思うのが、基本的にみな、「野郎くさい」っていうこと。まあ、ヒップホップの「ギャグスタ・カルチャー」の部分はある種、暴走族的なところがあるから、仕方ないのかもしれないし、別にそれが悪いこととは思わないけれど、ヒップホップだって、生誕もう30年だかになり、普通にTVやラジオからかかる音楽なんだから、純粋にヒップホップの音楽性の部分に目を向け、それを料理できるやつがいてもいいと思う。そう、たとえば、ソニック・ユースの音の追求や、フレイミング・リップスの音遊びの感覚の中にヒップホップが道具として入るような、そんなバンド。それをできていたのは、「ローファイ+ヒップホップ」を実行に移したデビュー時のベック(とその後、そのサンプリングの手法をとことん押し進めた『オディレイ』の頃のベック)くらいだろうか。


 そんな時代背景を考えたとき、Go! Teamというのは非常に貴重な存在だ。90sオルタナオールドスクール・ヒップホップも70sファンクも60sポップもごちゃ混ぜにして、自由に遊んでみせる彼らは、つまり、ベック以降の空席に一番近い位置にいるのかもしれない。そして、9月リリースのセカンド・アルバムに先駆けた先行シングルがこれである。90年前後アングラロックバンドっぽい調子はずれのギターリフ、70sファンクのホーンリフ(さびリフがやばい!)、まだストリート・ペインティングやブレイク・ダンスに隣り合って存在していた頃のような初期ヒップホップ調のラップ、そして生バンドのダイナミズムをぐっと引き出すドラム。まるで、オルタナ・ノイズバンドとP-Funkのセッションのような曲だ。これは、凄い。ひょっとすると、九月は「2000年代の『オディレイ』が登場するのかも」と、思わず胸が高鳴った新曲。

Grip Like a Vice

Grip Like a Vice