Summer Sonic Good Acts And Other


Best Act:Modest Mouse
すでに、名を成したミュージシャンが、すでに名を成したバンドに加入して、それが完璧なケミストリーと、アンサンブルの強靭さをものにできるというのは、本当に信じられないことだ。アルバム『We Were Dead Before The Ships Even Sank』でもあらわれていたその美点は、ライヴでもしっかり表現されていた。”Float On”や”View”をはじめ、過去の曲も、ツインドラムとトリプルギター、そしてアイザックの破れかぶれながなり声の織り成す強靭さで見事に輝いていた。馬鹿馬鹿しいくらいの荒唐無稽さ、無目的に爆発するエネルギーが、一抹の物悲しさを湛えるという彼らのサウンドを生で体験したら、感動せずにはいられない。


Running Up 1:Arctic Monkeys
サマーソニック史上最速・最年少のヘッドライナーとして、事前から注目の的だったArctic Monkeys。元々、楽曲そもものや演奏力のハイエナージーぶりには定評があった彼らだが、セカンド・アルバムで見え始めた「引き」の感覚も加わり、圧巻のライヴに。バンパイアとナイトメアとロボットダンスにまつわるロックンロールのヒリヒリした空気はすばらしかった。もともとぶきっちょな彼らはライブ中ほとんどMCもしなければ、合唱やハンドクラップを求めたりすることもないが、アンサンブルの押しとタメで、自然と客にそれをさせてしまうところなど、もはや熟練の領域。終演後に静かにこぶしを握ったアレックス・ターナーの顔に、堂々の凱旋パフォーマンスへの充実感がにじみ出ていた。


Running Up2:Bonde Do Role
まさかのダークホース。ブラジル生まれのバイレ・ファンキ・バンドは、まさに、ノータブーな、熱狂と爆笑のパフォーマンスを展開。何が「ノータブー」って、本人たちが馬鹿なシモネタを披露しまくったりとか、半裸のハードゲイみたいな髭MCのダサダサ踊りとか以上に、しょっちゅうブースから離れて、フロントへ出て奇声を上げるDJ。「2MC 1DJ」かと思ったら、「3MC NoDJ」である。(ファンキーモンキーベイビーズかよ!)では、流しっぱトラックで音がしょぼくなるかというとそうではなく、この男二人が発する馬鹿でかい奇声が「リフ」の役割を果たし、「カラオケ」感を感じさせない。(まあ、ヒップホップにおけるラップとは元々リズム音としての役割があるから、ある意味彼らも「基本」には忠実であるのだが)彼らのパフォーマンスを見てしまった人は、もうこの夏の残り、バイレ・ファンキで決まりである。Hey!


Other Good Act:
Interpol(カルロスDの髭は、実は結構さまになっている。キーボードの本格導入で不安定だった演奏が安定し、構築力が向上した)
LCD Soundsytem(ジェームズ・マーフィーの意外にソウルフルな声とクマのプーさん的可愛らしい身振り手振りは貴重な魅力)


Worst Act:Creativemanあたらめファックリマン
今年から、会場が移転した大阪だが、クリマンの管理体制のずさんぶりは目を覆おうものがあった。特に最悪だったの交通手段。最寄の駅からシャトルバスのみというのは、いくらなんでも計画段階で無理があるとは思わなかったのだろうか?おかげで、バス待ちで行きは1時間、帰りは3時間待ちである。特にヘッドライナーを見て帰ったお客さんの中には、終電を逃した人も多数出た状況だったようで(幸いにも、自分が乗ったのは、その最終電車でした)、アフターケアとかどうしたのか、非常に気になる。シャトルバスの列も途中からグジャグジャになり、中途半端な係員の誘導が逆に客の顰蹙をかうなど殺伐とした空気に。ライブの後の満足感に思いっきり水を差されて最悪である。元々、会場設営のひどさには定評があるクリマンだが、来年はさすがにこれよりまともになることを期待したい。