Kings Of Leon 『Because Of The Times』

My Rate : ★★★★1/2


このバンドが変なバンドだというのは、もう十分に知っていたはずだった。2003年デビュー作の、「サザンロック+ストロークス」っていうのも相当天然だったし、2005年のセカンドアルバムでは、ポストパンク系のバンドとの交流に感化されて、ムサムサのルックスから、髭をさっぱり剃り落としイケメンズに変身。音までポストパンクになった。その変化の仕方だって相当天然。


そもそも、20歳近くまで、親の方針で世間から隔離され、流行の音楽なんて全く知らない状態だったという逸話は本当だったらしく、(ニルヴァーナさえ聞いたことがなかったらしい)束縛から解き放たれた彼らは、新しい音楽と出会うたびに、どう考えても天然としか思えないような素直さでその喜びを表現してきた。


で、今作。彼らは、また彼らにとっての「新しい音楽」に出会ったらしく、彼らの音楽はまた大きく変わった。明らかに彼らが念頭においてるのはU2だ。


なんだけど、明らかにそのオマージュの仕方が変。


普通、U2を志すっていうのは、「大衆的なバンドになりたい→そのロールモデルU2だ」っていう図式が存在するんだけど、(典型的な例は最近だとKillersの『Sam’s Town』)彼らの場合、「大衆バンドになりたい」っていう図式が全く存在しない。ただ、U2スゲー、U2スゲー、あんなんになりたい!」というそれだけ。だから、U2へのオマージュの仕方が他のバンドと全然違う。アンビエントなギターはモロに『Joshua Trees』期のエッジなんだけど、なぜか「むしろAchtung Baby?」なファンクなリズムが入る曲や、むしろ「大陸に渡る前のU2?」的な直情的なリフに走るときもある。「U2=大衆バンド」という等式からこぼれ落ちた細かい要素ばかりを集めたようなそんなアルバム。これはちょっとした盲点だ。


そんな天然野生児の吸収力がちゃんと「Kings Of Leonの世界観」を増強しているんだから、凄い。このバンドは、何をやっても共通して現われてくるのは、「大陸の奥深くに眠る神秘性」なんだと思うんだけど、今までの作品の中で、今作がもっとも大きなスケールでそれが表現されている。


もう、スタート地点からは何マイルも離れた。でも、離れれば離れるほどより一層彼ららしい。そんな決してぶれない軸が何よりも頼もしい傑作。

BECAUSE OF THE TIMES

BECAUSE OF THE TIMES