Klaxons 『Myth Of The Near Future』

My Rate : ★★★1/2

「ニュー・レイヴ」とは一体何だったのか。その意味として、一つ確実にあったのは、2000年代UKロック=フランツ・フェルディナンド以降・リバティーンズ以降に対するあきらめだ。2004年この2バンドによって、久しぶりの盛り上がりを見せたはずの英国のロックシーンも、大量のフォロワーによるワンパターン化で、「最近、なんか新しいのないよね」っていう飽和ムードを生み出し、あろうことか、リバティーンズピート・ドハーティはドラッグとゴシップがアーティスト活動よりも目立つようになり、キッズの夢を代弁してくれる存在ではなくなった。そんな、「もうギターロックバンドなんてもういいよ」という諦念が、比較的新しいものに敏感なリスナーを純粋な享楽性に向かわせ、その受け皿になったのが、NMEが「ニューレイヴ」と一まとめにしたダンスアクトたちだったと思いうのはあったと思う。そして、その最大のヒーローとして、このバンドは期待された。丁度、10年前、Radioheadが『Ok Computer』でブリットポップを破壊したのと同じような、そんな期待だ。


このアルバムのポスト・モダニズム的な意匠は一見この要望に答えているように見える。その観念的な記号性では確かに見事なアルバムだ。


ただ、厄介なのは、90年代はオアシスが登場してブリット・ポップが英国全土にまで広がったあとで、レディオヘッドが『Ok Computer』を出した、という順番であったのに対し、2000年代は「オアシス的」なる動き(=アークティック・モンキーズ、ザ・ヴュー、フラテリスなど)と「レディオヘッド的」なる動きがほぼ同時に起こってしまったこと。シーンの終止符となるには、タイミング的にあまりにも早いのだ。さらに、当時のレディオヘッドアメリカのリスナーにも、「これがロックの未来」と言って説得力があったのに対し、Klaxonsの場合、あくまでも芯の部分が英国ポップであり、ビートの部分は実のところそれまでのポストパンク系のバンドとそれほどドラスティックに変わっていなかったため、結局のところ、イギリス国外にまで広がらないままだ。


現在の世界の音楽の1シーンの代表選手としてみるならば、このアルバムはいいアルバムである。逆に言うと、今のところ、このバンドはそれ以上ではない。事前の期待の大きさを考えると、そこに若干の肩透かし感を覚えてしまうのは否めないと思う。

Myths of the Near Future

Myths of the Near Future

続きの予定は、Long Blondes , !!!とか