Lucky Soul 『The Great Unwanted』(恋はゴージャスに)

My Rate : ★★★1/2
完成度の高い「レプリカ・サウンド」だ。
そう、Lucky Soulとは何か、といったとき、要するにそれは「レプリカ」なのだ。50s〜60sの煌びやかなポップスの精巧なレプリカなのである。


例えば、同じ60sサウンドといえば、Pipettesだが、Pipettesは「レプリカ」ではなく「コスプレ」である。「ロックンロールもヒップホップも好きー!でもロネッツも好きー!ああいうのやっちゃおう!」という女子3人のノリ一発があのバンドのコンセプト、ひいては、あのバンドの持ってる勢いまでを作り出している。それに対して、Lucky Soulを作っているものは?あのバンドを引っ張っているのはヴォーカル、アリ・ハワードではない。バンドのコンセプトを作っているのは、バックの男衆の一人ないし二人であって、アリはどこまでも「人形」に徹してこう歌ってしまう。「ねえ、素敵な恋降らせて」、「あなたがいないと唇がさびしいの」。「Your Kisses Are Wasted On Me!」と言い放ったPipettesとはエライ違いである。


これは、「媚び」なのか、いやそうではない。要するに、黙って、「60sガールズポップ人形」になりきっている、そういうことなのだ。ある意味、Fratellisが自己主張することなどそっちのけで「パーティー・ミュージックとしてのロックンロール」の楽しさの追求に没頭しているのと近い。これは自己主張としての音楽ではなく、徹底した「伝統芸」としての音楽なのである。(Lucky Soulが意外にも同性から人気が高いのは、このことと無関係ではあるまい。「人形」だから、女眼にみても「カワイイ」のである。実はルックスいいくせに、「モテナイあなたの味方です」といって嫌味になってしまったLong Blondesとは実に対照的だ)


だから、Fratellisがi-Pod CMに使われたように、「たけしのコマネチ大学」で使われようが関係ないし(たとえ、レコード会社の差し金であっても)、日本独自PVで森泉が出演しようが別に問題ないのである。(大体、「精巧なレプリカ」を愛好してこそのセレブである)邦題に、「恋はゴージャスに」とついたってへっちゃらである。(むしろ最後に☆印をつけたいくらいだ)。でも、ジャケットの差し替えは…ちょっとなしかな。(あれで手に取る人増える?)そして、「アルバムという概念がまだ発達していなかった時代のよく出来たレプリカ」であるからこそ、アルバムで聴くよりも、一曲で聴くほうが、それよりもむしろPVで見る方がいいのだ。アリちゃん、萌え〜。

恋はゴージャスに

恋はゴージャスに