Kate Nash 『Made Of Bricks』

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ちょっと意地悪く言ってしまえば、彼女がここまで受けているのは、「Lily Allenがヤンキーに見えてしまう優等生orナード子」を巻き込むインドア感とポップさなのだろう。Lily Allenの「Smile」と比較された大ヒット曲「Foundations」が、実は「Smile」のように「なんで隣の女とヤッてたのよ!」という過激な代物ではなく、もっと普通の「分かってくれない彼氏」についての話だったことなど、象徴的である。聞けば、Kateのもっとも影響を受けたアーティストはRegina Spektor、グラストンベリーで見たいバンドは、Arcade FireとBjorkMySpaceのフレンズにはThe Maccabeesがいて、Rumble Stripsのライブでは舞台袖で踊っていたらしいとか、NMEの表紙にはJack Penateと腕組んで登場と、南ロンドンの文科系バンドとも仲良し。曲作りの他に、脚本を書いたりすることもあるっていうエピソードも、本人の文系少女っぷりを物語っている。(ちなみにタイトルのセンスもそうですね)「Dickhead」だの、「Shit Song」だのという曲もあるけれど、そりゃあ文系っこだってたまにはそれくらいのことは言いますよ。


で、この「優等生にも受ける文系アイコン」っていうのは、別にそれ自体が「悪い」かというとそうではなくて、なんでも、時代をひっぱるムーブメントのアイコンって必ずそういう対称的なのあるじゃないですか。「やや不良」と「やや知的/優等生より」みたいな。たとえば、エルヴィス・プレスリーとバディー・ホリー、ローリング・ストーンズビートルズニルヴァーナパール・ジャム、オアシスとブラー、リバティーンズフランツ・フェルディナンド金原ひとみ綿矢りさ(?)、沢尻エリカ長澤まさみ(??)。最後の二つの例のせいで若干怪しくなってきましたが、要するに、「ユーモアで見せる/知性でみせる」っていうのは、昔から大きな武器だったわけですよ。リリー・アレンなり、ロックにしてもThe GossipとかCSSとか、基本的にテンションが外向きで、過激なアイコンが多かった中、それと対照的な子が出てきた、そういうことなんでしょう。


というわけで、アルバム『Made Of Bricks』も、「Foundations」的なインドアな小技の多いオサレトラックでポップな楽曲と、アメリカのSSW(FeistとかCat Powerあたり)の土臭さを減らしたようなSSW楽曲からなる期待通りの出来。「Mouthwash」,「Skelton Song」は今後のシングル候補になりそうで、今年後半、彼女の話題はまだまだ続きそうな予感です。

ちなみにライブは中々出来る子です(冒頭の音が大きいのでご注意を)